お金を貯める

バイト先の給料が入ったかどうか確認するために、SMBCの通帳を持ってATMで通帳記入してもらった。残高は着実に回復しているが、目標にはまだ程遠い。

僕がお金を貯めるのは、ある男たちに復讐するためである。その男たちは今、どこで何をしているかは分からないが、きっと汚い仕事を平気で続けているに違いない。仮に心を入れ替えて自分のしたことの償いをするために、街の清掃員になっていたとしてもこの復讐心は変わらない。

当時、師匠と呼んでいた三十朗さんはこれを最後の仕事にするつもりで、丹精こめて菩薩様の像を彫っていた。あまりに仕事にのめりこんだためか、期限に間に合いそうもなく、未完成の像を残して依頼主のところへ期限を延ばしてくれるよう、お願いに向かうことになった。私も師匠について行った。期限三日前のことだ。

師匠は依頼主に期日に間に合いそうもないこと、しかし必ず自分の最高傑作にしてみせるということを告げると、その石油王は

『期日に間に合わなくても依頼どおり像は受け取ろう。しかし、期日を過ぎて依頼人に品物を渡すような奴は職人として認めるわけにはいかない。その辺のことよく考えるがよい。』

とそれらしいことを言った。工房に帰り師匠は像を彫らずに一晩悩んだ。

そして次の日、心を決めたらしい師匠は一人で依頼主のところへ再び出向いていった。残された私は師匠がどんな決断したのかをひとり考えていた。