研究と独り言

もともとは基礎の研究者ほど高等な職業はない、と思っていた。

何が高等かというと、海のものとも山のものとも分からないものに半分人生かけて真理なり原理なりを探究、追及していくという姿勢が、世俗の利害関係とか政治的なものにもまみれていなくて、信念を貫いていると思えたところ。従うのを科学的真理のみというあたりにも。

もちろん実際には人間のやることだしどこかに感情的なものは絡むだろうし、何かをするためには予算が必要で、その出所を考えると、脇目も振らずに自分の興味の赴くままというわけにもいかない。

子供の頃からのイメージとは違ってきたけど、他の道に進みたいのは研究者に魅力を感じなくなったからというわけじゃない。言い訳すれば、もう一度人生やれるなら研究者やるんじゃないかと思う。

 

ただ、イヤだなぁと思うことがある。

独り言が増えること。

構成的に言葉を吐いてる人も普通にいるし、昔はそんなことなかったのにいつしか染まっていった人も知ってる。近くにいるM1の後輩はちょうど発展途上の状態にあるし。

日常の中でこういう人が多いから感覚もおかしくなって、それが普通に思えてきちゃうんです。世間から見たらずっと独り言言い続けてる人なんてただの変人ですからね。

変人…研究者は変人でいいとも思ってたけど、そこの感覚も変わったのかも。

感染拡大しているということは、もちろん自分もその危険に曝されているわけで。

試薬を注文してるときのこと。必要量と照らし合わせてどの大きさを買おうか考えていたら、

『5ml…か』

って声が聞こえたんです。

誰もいないときなら意識して独り言言うことはあっても、無意識に言葉が出るってほとんど初めての経験で、非常にショックでした。

みんながみんな独り言が増えるわけじゃないんだろうけど、こればっかりはいただけない。早いうちになんとかして抑えこまないと大変なことになってしまいます。