たい焼きの尻尾

またかなり間が空いた。たいそうなことを書こうとするとよけい書けなくなったり。月並みに方の力抜いて書いていこう。

 

尻尾まであんこが入ってる、というのが画期的だというたい焼きが一時期あった。

たぶん生地よりもあんこの方が高いだろうから、客からしてもサービスされているんだろうとは思う。特許が取れてるのかは知らないけど、それなりに革新的だ。

『尻尾には餡は入っていない』という既成概念にとらわれずに技術を磨いて『尻尾にも餡が入っていたら』という理想をかなえる。これが流行の『イノベーション』なんだと思う。

尻尾に餡を入れることで、それまでの普通の尻尾とは違う新しい価値観を生み出すことで差別化を図り、成熟した業界に風穴を開けると共に、その新規性でそれまでのたい焼き離れに歯止めをかけ、さらには話題を呼び全体のたい焼き需要までも上げる。たい焼き焼き機は新しいものを導入しなければならず、設備投資も増える。それによって、新しい流れに乗れなかった既存店舗は淘汰され、全体の経営能力の底上げも成し遂げられることになる。

あくまで想像でほんとかどうかは知らないけど、地味そうなことでも『革新』によって思った以上に大きな影響を社会に与えることができるというのはまんざら嘘でもないと思う。

ただ、結果として既存のものが淘汰され、格差といった形で現れるのは問題だ、と考えるかもしれない。昔ながらの店がなくなっていく、って。

けど、なかには尻尾の部分の餡がない、生地だけのぱさぱさした食感が好きだという人もいるんだろうから、一概に喜ばしいことにはならない。僕もそっち側の人間だし。

新しい価値観の創造はすばらしいこととは思うけど、それが人に受け入れられるかは分からない。新しいもの好きの一方で、馴染んだものへの愛着もある。新しいからといって常に受け入れられるというわけじゃない。

そんな中で多くの人に受け入れられた結果、既存の価値観が廃れていくならそれが時代の流れというもので、容認すべきものだと思う。それでも昔のものに固執するんだ、という気概があれば廃れこそすれ、なくならないだろうから。