リスクコミュニケーション

今回は少し読みにくいかも知れませんが、お付き合いください。

食品安全委員会主催の食のリスクコミュニケーションに行ってきました。リスクコミュニケーションというのは、行政が行う、国民に安心してもらうためのひとつの手段です。
これまでは行政の中で基準を定めて、その中で評価、管理して、『安全だ』という結果だけを国民に示していたのだけど、押し付けの安全からは安心は生まれないため、ようやく安心を提供するための方向を模索し始めた、ということなんでしょう。

『科学技術』と同様に、『安心安全』も全く別の概念なんですよね。
安全はリスクとして数値化できるため、科学的に適正な基準で評価さえすれば、押し付けだろうが提供することはできる。
でも、安心は与えられるものではなくて、情報を受け取った人間の主観によるもの。同じ情報を受けても人によってそれで安心するかどうかが違ってくるのは当たり前のことだし。

そういうわけで、国民の方にも納得してもらうために評価の方法の時点から意見を取り入れて、できるだけ理解を深めてもらおうという目的があるわけです。結果の丸投げにならないように。

で、行ってみると、テーマが『輸入牛肉のBSE検査を行うべきか』みたいな話で。これだけ聞くと今さら、みたいに聞こえるけど、オーストラリアとかニュージーランド、南米とか、今までBSE感染牛が見つかっていない国でもやるべきか、と。加えて、本来管轄している(リスク管理農水省厚労省はその必要性を感じていないらしく、食品安全委員会(リスク評価)が独自にその評価を行っていくべきか、という微妙な内容。

だから、論点としては
『やったらいいだろうけど、どのくらいの予算が必要で、その必要性はどのくらいあるの?』
ってことと、
『リスク評価機関が諮問を受けずに評価を行って、結果を管理機関に投げるのを認めていいのか?』
っていうあたりだと思いました。

が、聞いているとそんな話にはならず、質疑応答の中でも『アメリカ産牛肉の全頭検査をすべきだ』とか『アメリカの食肉業者はうまく検査をごまかしているという裏情報がある』だとかちょっとセンセーショナルで偏った感じに。質問してたのは消費者団体の方々だったと思うけど。

だから全体として、評価の是非を問うことはほとんどなく、安心には金がかかるっていう発想はなく、盲目的に安心を、っていう印象でした。
そんなこと言うなら、自分で質問しなさいって言うでしょうけど、そう思いながら結局できずじまいでした。情けない。

独自の評価はやる、っていう結論ありきだったのかなぁ、と邪推してしまいます。
それによるメリットもあんまり分からないけど。

でも、職もなくこういうのに出始めたらなんだか裁判の傍聴マニアみたいだなぁ…。