ノイズキャンセル

 昔からヘッドホンというものは使われてきたし、むしろ今見かけるイヤホンより、ヘッドホンの方が歴史は長いのだと思う。初代ウォークマンに付属していたのもイヤホンではなくてヘッドホンだった。ところが、テープからCD、MDの時代になるとインナーイヤー型のイヤホンが主流になり、ipodに今でも付属しているのはインナーイヤー型だ。21世紀に入った頃に、耳かけ型のものが流行って今も使われているものの、スタンダードとまではいっていない。続いてここ最近ではカナル型(密閉型)のイヤホンが売れるようになり、最近のSONYDAPにはこのタイプが付属してくるようになったらしい。

 僕もちょっとくらい音にはこだわろうという思いから、1年くらい前にSONYのMDR-EX90SLというイヤホンを買った。高い買い物ではあったものの、確かに数千円のイヤホンとは全く違うことに驚いた。ただ、実際に日常生活の中で使っていると、様々な不便もあった。一番の問題はカナル型はほぼ耳栓であり、外音が聞こえにくいこと。ひとりで集中したいときなんかは向いているものの、自転車に乗りながら利用することが多かった僕にとっては危険と隣りあわせだったので、結局、自転車用と二つを持つ羽目に。もう一つの問題はさらに個人的な問題で、右耳に比べて左耳の穴がかなり小さく、付属の一番小さめのイヤーピースでもうまく聞こえないことがあったりした。

 結局、ちゃんと音楽を聴こうと思ったら、部屋でしっかりヘッドホンつけて聞くべきだということに気付いた。いくら高いイヤホンでも、やっぱりヘッドホンの方がいい音が出るし、パソコンに比べたら格段にいいとは言っても、結局ipodはポータブルプレイヤーなわけで、アンプも決して高くない据え置きのプレイヤーの方がよいと思う。そういうわけでipodには安めのインナーイヤー型のもので済まそうと決めた。

 ところが、最近流行のヘッドホンを視聴したら思いがけず関心を持ってしまった。ノイズキャンセリングである。結果から言えば全く要らないのだが、技術力の高さに魅せられた。試しに音を鳴らさずにノイズキャンセルだけ使ってみると、気にしていなかった雑音すら消えて、不自然なまでの静寂をくれる。それ加えて、ちょっと離れたところで説明している店員さんの話がやけにクリアになる。機械音は消してくれるが、人の声は消さないらしい。これは盗聴にもかなり有用だ。ただ、安いのだと音楽なしではノイズが残って、ちょっと不快だったりした。それでも、ここまできれいに音が消えるものなのか、と軽く衝撃的だった。大型電気店に行く機会があったらぜひ視聴してみたらいいと思う。

 それでも必要ないのは、電車や飛行機に乗る機会がほとんどないことと、単純に値段のわりに音がよくない気がしたからである。人の声が消えるなら、ミスドやマックで本を読むときなんかに使えるけれど、話し声ばっかり聞こえるとなるとあまり使いどころがない。音も、2万以上するヘッドホンタイプでも、同じくらいの値段のNC機能なしのものと比べると、聞き込むことなくNCなしの方がいいと思える(NC機能にかかる部分を考慮すれば当然だが)。

 毎日1時間以上かけて電車通勤とか、年に何度も海外出張みたいな人、騒音の大きな工場の近くで働く人なんかにはすごくいいものなんでしょうけど。