大学生協

 読書の秋ということで、秋の夜長には本を読もうと思う。最近のマイブームでもあるので。

 図書館などで借りた本は結局読まないで返してしまいそうなので、いろいろ反対意見はあるだろうが、特に書物に関して恵まれた環境にある僕は、読もうと思った本はほぼ買うことにしている。兄から小遣い代わりにamazon.comプリペイドカードが送られてくるなど、あまりメジャーな家庭でもあるまい。

 それでも、大学生協で本を買うと1割引になるので、基本的に生協へふらっと訪れて、気になったものを2、3冊買って行くことが多い。さすがに単行本は買わず、文庫、新書が主だが。

 だいぶ通った甲斐もあって、市中の本屋と生協の違いについて考える機会があった。

 もともとは、大学生協は学生向けに専門書の品揃えが多く、外国の雑誌はあるが、漫画はない、という程度の違いしかないと思っていた。しかし、ジュンク堂のような大規模書店になると、大学生協並、ときにはそれ以上に品揃えがよかったりする。これは理系、文系共に当てはまるようだ。

 とすると1割安いという程度のことで、大学生協が抜きん出ているということはないのだなと思ったが、それもまた思慮が浅かった。

 ある本に触発されて、岩波文庫ロマン・ロランのジャン・クリストフ全四巻を買ったときのことである。まさか自分がこんな古典に手を出すことになるとは、と思う一方でこんな古典に手を出そうと思う奴は多くはあるまい、と自分を誇らしくも感じながら箱ごと買って帰った。その次の日である。特に目的もなくまた生協を訪れ、そういえばと自分が昨日手を伸ばした本棚を見てみると、既に新たなジャン・クリストフがそこに並んでいたのである。

 これだけをもって学生向け図書の在庫が厚いというのは説得力に欠けるし、ジュンク堂だってそのくらいの在庫を抱えていてもおかしくない。

 ただ、数十年の期間を通して大学生だけを相手に本を並べてきたのである。どんな本がよく読まれ続けているのかといった情報の蓄積は派手に表に出なくとも、まさに在庫のような目に見えにくい形で根付いているのではないかと妙に感心した。

 それなら、早く古事記日本書紀も補充してくれたらいいのにと思わないでもない。